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以前ルーマンの社会システム理論を読んだ時、
ルーマンの書籍では平易な方のものを選んだにも関わらず、
相当じっくりと読み進めないと置いていかれてしまうため、
グッタリして挫折した覚えがある.

もう少し 解説本的なヤツを読んで、大枠を理解して
それからこいつを倒そう と考えていた.
そのまま手が止まって半年くらい経過した頃、
SFCの井庭さんという教授がルーマン信者ということが分かり、
彼が最近 社会システム理論の本を出版したことが分かった.

中は宮台さんとの対談もあり、
こいつはおもしろそうだとさっそく購入.

やっぱりすげー面白かった.

まず 社会システム理論とは??
そもそも、社会システム理論というか社会学というのが、
社会とはなんぞや? みたいなことを記述・説明する学問で、
いろんな分野に別れている.その中の1つが社会システム理論で
20世紀中盤にパーソンズが、後半にルーマンガそれぞれ独自の理論を
構築して、今に至る.

パーソンズとルーマンの社会システム理論の違いは、
社会システムの中に”人”が介入されているか否か.
前者は人は1パーツだと考え、後者はパーツでは無いと考える.

経済学の一般化のように、社会学も現象/社会を一般化する事で
例えば経済界と宗教界、政治界を比較するようなことを1つの
目的としていて、その意味では ルーマンの切れ味は
とても鋭いと僕は感じた.

じゃあ
ルーマンの理論とはどういうものかと言うと、
社会を、コミュニケーションがコミュニケーションを連鎖的に
引きをこすことで成立つシステム であると定義づけている.
例えば、
経済で言うと、”支払”というコミュニケーションが流れ続ける事で
経済が成立している.これが滞れば、たちまち経済は成立たなくなる.
水が流れることで川が成立し、流れが止まればそれは川ではない.
川の本質は ”水”ではなく、”流れ”だというイメージ.

これをもう少し整理すると、
経済システム:稀少性を減少させるという機能
成果メディア:貨幣
コード:所有/非所有
振り分けシステム:予算、投資プログラムなど となる.
比較してみる.
政治システム:集団拘束的な決定を実現するという機能
成果メディア:権力
コード:与党/野党
振り分けプログラム:綱領、マニュフェスト

上記のように社会の様々なシステムを並列に比較対象するこができるのが
社会システム理論のすごいところで、
これらが垂直的、横断的に絡み合っているのが現代の複雑な社会の姿ということになる.

先に示した、人間が社会システムのの主構成要素になっていないことで、
人間を上記のコミュニケーションの流れと区別が可能になり、
初めて 社会と人間 という一対の関係を記述する事ができるという
大きな結果が得られるわけだ.

あとおもしろいのは、
そもそもこの考え方自体は生物学の分野から持ち込まれていて、
同時期にプログラミング系でもサンタフェ研究所とかで
流行っていた複雑系の概念にも繋がっている.
つまり、
上記システムは、オートポエイティックで自己生成・成長していくシステムであるということ.
井庭さんは この部分に共感していて、
コンピューターシミレーションを組む事で
社会の動きを把握したり予測したりする研究をしているようだ.

そんな彼のスピンオフ概念が、
創造システム理論 で、
「発見」は「アイデア」と「関連づけ」が「見いだされた時」に創発する.

まだ当然発展段階の概念なのだけれど、
これは非常に興味深いと思う.
というのは、デザイン思考だとか、イノベーションコンサルティングだとかで
用いられている手法というのが
この考え方に通じるものがあるからだ.
IDEOがやっているような手法でも、
コンテクスチャル・インクワイアリーや技術の棚卸し をすることで、
拾っていない情報をまずどんどん集める.
その後、それらの関連付けを試行錯誤して、
ラピッドプロトタイピングして、
さらにそこから得られる情報を関連づかせて、
このフィードバックを繰り返している.

つまり、アイデア/情報をできるだけ引出す仕掛けを、
それぞれのプロジェクトのフェーズで繰り返すことができるシステムを
構築する事で、効率的にイノベーションが起こるように
彼らはプロジェクトを構築しているのである.
これは、逆に言うと、
アイデア・情報出しの数が少ないいことで、関連づけができなくて、
部署が完全に別れる事でラピッドプロトタイピングからの
情報の関連付けのスパイラルがつくれないことによる
低イノベーションに悩む現代日本の企業にも当てはまる.

こういうことを意識して情報集めや案出しするのと、
漫然とやるのとでは 隔絶の差がある.
やってみよう☆